アジアンハンディキャップについて

アジアンハンディキャップは、スポーツベッティングの特徴的な賭け方のひとつです。
「必ずアジアンハンディキャップを選ぶ」という人も多い人気の賭け方なのですが、難しく見えるのか初心者には敬遠されがち。
オッズ以外の数字が並んでいたり表示と違う数字で計算したり、「後で覚えよう……」と思わず後回しにしてしまった人もいるのではないでしょうか。

ここでは具体的な例を挙げながらアジアンハンディキャップの基本を紹介します。
アジアンハンディキャップは、たしかに特徴的なルールです。
ただ仕組みは難しくないので、イメージをつかめればすぐに覚えられます。
より深くスポーツベッティングの楽しみを知るためにも、ここで覚えてしまいましょう。

asian-handicap

アジアンハンディキャップはサッカー限定の特別ルール

アジアンハンディキャップは、スポーツベッティングにおけるサッカー限定の特別なルールです。
スポーツベッティングの対象になっているスポーツの中にはハンディキャップの概念がありますが、アジアンハンディキャップはサッカーにしかありません。

アジアンハンディキャップの考え方は、1998年11月にジャーナリスト「Joe Saumarez Smith」氏によって造られたといわれています。
インドネシアのブックメーカー「Joe Phon」で行われていた「hang cheng betting」というスタイルを起源とし、オンライン化の波を受けて2000年代初頭に大きな人気を集めました。

サッカーのハンディキャップは2種類

サッカーで採用されるハンディキャップは、主に以下の2種類です。

– ヨーロピアンハンディキャップ(European Handicap/EH)
– アジアンハンディキャップ(Asian Handicap/AH)

いずれもハンディキャップを設けることで勝率を拮抗させることが目的です。
それぞれの違いをこれから紹介しますが、まずはハンディキャップの前提知識を押さえておきましょう。

ベットの予想は必ずハンディキャップを加味して考える

ハンディキャップを考える際は、実際の得点差に加えてハンディキャップ分の加算を忘れないことが大切。
「3-1で1軍が勝つだろう」と予想したとして、1軍に-2点のハンディキャップがあれば結果が予想どおりでも勝敗は引き分けになります。
必ずハンディキャップを含めて点差や勝敗を予想するようにしましょう。

また、ベットの当否にかかわるのは自分のベットについているハンディキャップのみです。 1軍のハンディキャップが-2、2軍のハンディキャップが+2と設定されている試合だとして、1軍勝利にベットしている場合に関係があるのは「-2」のみ。 2軍のハンディキャップは、2軍勝利にベットしたときにのみ反映します。 ライブベッティングは賭けるまでの過程を一切無視する 試合中(ライブベッティング)にハンディキャップでベットする場合、ハンディキャップが有効なのは「ベット以降の得点」に限定されます。 ベットする時点での得点状況は一切無視してベット時点を0-0とし、それ以降の得点状況にハンディキャップを加えて当否を判断するので注意してください。 – 前半3-0で1軍が優勢 – 後半開始時に「1軍勝利/ハンディキャップ-1」でベット – 後半の得点は1-1 – 試合は4-1で1軍の勝利 このような場合、前半の結果を一切無視し、ベット時点(後半開始時点)を0-0と考えます。 後半の得点状況は1軍、2軍ともに1点ずつなので、ハンディキャップを加味すると1軍は0点、2軍1点となり2軍の勝利。 よって、ベットはハズレです。

ヨーロピアンハンディキャップ

ヨーロピアンハンディキャップとは、いわゆるよく知られているハンディキャップと考えて問題ありません。
単純に弱いチームに有利な条件(ハンディキャップ)を付加し、結果が均衡するように調整します。
たとえば1軍対2軍の試合で2軍に+1点のハンデを付ける場合は「1軍(-1)/2軍(+1)」という具合です。
ヨーロピアンハンディキャップは整数で付加するため、結果は以下のとおり「いずれかの勝利」「引き分け」の3種類。

– ホームチームの勝利
– アウェイチームの勝利
– ドロー(引き分け)

ヨーロピアンハンディキャップは3通りの結果があり得ることから「3Way Handicap(スリーウェイハンディキャップ)」と表現するほか、「Match Handicap(マッチハンディキャップ)」または単にハンディキャップともいいます。

先ほど例として挙げた1軍対2軍の試合で、2軍に1点のハンディキャップを設けた場合の試合結果と勝敗は以下のとおり。

 1軍得点
0123
2軍得点0勝ち引き分け負け負け
1勝ち勝ち引き分け負け
2勝ち勝ち勝ち引き分け
3勝ち勝ち勝ち勝ち
 

2軍はハンディキャップがあるため得点が+1され、同点以上なら勝利、点差が1点なら負けてしまっても引き分けになります。
これを踏まえて、1軍が2点差以上で勝つと予想する場合は「1軍の勝ち」にベット、1点差以下なら「2軍の勝ち」にベットするのがヨーロピアンハンディキャップの考え方です。

アジアンハンディキャップ

基本的には先に紹介したヨーロピアンハンディキャップと共通していますが、アジアンハンディキャップには引き分けがない点が大きく違います。
勝ち、負け、引き分けと3つの選択肢があったヨーロピアンハンディキャップとは違い、アジアンハンディキャップでは勝ち、負けの2つしか選択肢はありません。

– ホームチームの勝利
– アウェイチームの勝利

ヨーロピアンハンディキャップは選択肢が3つあるため、単純な的中率は約33%ですが、アジアンハンディキャップは選択肢が2つしかないため、単純な的中率は50%と当たりやすいのが特徴。
これは、整数を用いるヨーロピアンハンディキャップと違い、0.5単位でハンディキャップを設定するためです。
ただし、アジアンハンディキャップは必ず小数で設定されるわけではなく、整数の場合もあります。
この場合は引き分けになる可能性があるのですが、それでもやはりアジアンハンディキャップの結果は勝ちか負けの2種類しかありません。
では、なぜそうなるのかを紹介します。

アジアンハンディキャップの値

アジアンハンディキャップの値は-2~+2の範囲で設定され、以下の3パターンに分けられます

– フルゴール(整数)
– ハーフゴール(0.5単位)
– クォーターゴール(0.25単位)

フルゴールとは、要するにヨーロピアンハンディキャップと同じく整数のみ。
ハーフゴール、クォーターゴールはそれぞれ1/2(0.5)単位、1/4(0.25)単位の値を設定する方式です。

アジアンハンディキャップの範囲(-2~+2)
フルゴール方式(5種類)2、-1、0、1、2引き分けあり
ハーフゴール方式(4種類)-1.5、-0.5、0.5、1.5引き分けなし
クォーターゴール方式(8種類)-1.75、-1.25、-0.75、-0.25、0.25、0.75、1.25、1.75

フルゴール方式はハンディキャップが整数なので同点(引き分け)の可能性がありますが、それ以外の方式は小数なので必ず得点差が生じ、勝敗が決します。

フルゴール方式の引き分けは返金

3つのうちで唯一引き分けの可能性があるフルゴール方式ですが、結果が引き分けだった場合はベットがそのまま返金されます。
勝ち、負けのどちらかにベットしていて的中すればオッズに応じた配当を得られ、ハズレればベットは没収。
引き分けの場合はベットがそのまま返金され、ノーゲームとして扱われます。
サッカー以外のスポーツには「Drow No Bet(ドローノーべット/DNB)」というベット方法があるのですが、フルゴール方式の引き分けはこれとまったく同じ扱いです。

ベット時点で「ハンディキャップ0」を選ぶこともでき、これも同様にDNBと同じベット方法になりますがオッズも同一とは限りません。
アジアンハンディキャップのフルゴール方式とDNBはいずれも「引き分けなら返金」ですが、微妙にオッズが異なる可能性があります。
ハンディキャップ0にベットする場合は、よりオッズがよい方を選ぶのが得策です。

ハーフゴール方式とクォーターゴール方式は必ず勝敗がつく

ハーフゴール方式は、アジアンハンディキャップで主に採用される方式です。
ハーフゴール方式、クォーターゴール方式ともにハンディキャップを含む点差が小数になるため必ず勝敗がつき、引き分けはありません。
結果は勝ちか負けのどちらか、1/2でベットが的中するので初心者でも理解しやすいベット方法といえるでしょう。

1つのオッズに2つのハンディキャップを設定する「スプリット」

アジアンハンディキャップでは、オッズに対して設定されるハンディキャップは1つとは限りません。
ハンディキャップが1つの場合は「1軍 -1 2.0」(チーム名 ハンディキャップ オッズ)と表示されますが、「1軍 -1,-0.5 2.0」となっていた場合のハンディキャップは-1と-0.5の2つ。
このように、1つのオッズで2つのハンディキャップが設定されているものを「2Way Handicap(ツーウェイハンディキャップ)」、または「Split(スプリット)」といい扱いも特殊です。

スプリットにベットする場合、ベットした金額は自動的に2等分されます。
この例で仮に10,000円をベットする場合はハンディキャップ-1に5,000円、-0.5に5,000円をベットしたのと同じ状態になり結果の判定も別です。
スプリットで起こり得る結果には次の4種類があります。
的中したベットはオッズに応じて配当を得られ、ドローはベット額をそのまま返金、ハズレた場合は没収となるのはアジアンハンディキャップの基本どおりです。

– どちらも的中
– 半分的中、半分ドロー
– 半分的中、半分ハズレ
– どちらもハズレ

上記の例を基にした具体的な収支状況は次のようになります。
※ベット10,000円(5,000円ずつ)、オッズ2.0倍

 ハンディキャップ-1ハンディキャップ-0.5配当収支
どちらも的中10,000円10,000円20,000円+10,000円
半分的中、半分ドロー5,000円10,000円15,000円+5,000円
半分的中、半分ハズレ0円10,000円10,000円0円
どちらもハズレ0円0円0円-10,000円

慣れるまではわかりづらく感じるかもしれませんが、通常のベットであれば50%の確率で負けてしまうところを25%まで抑えられるなどメリットは十分。
スプリットでアジアンハンディキャップを楽しむ上級者も多くいます。

フルゴール方式とハーフゴール方式を合わせたクォーターゴール方式

クォーターゴール方式は、主にスプリットでハンディキャップを表現するために用いられます。
表示されるのは2つのハンディキャップの中間値で、1つの数字から2つのハンディキャップを把握できるので慣れるとわかりやすい方式です。

クォーターゴール方式の表示意味
+1.75+2.0と+1.5
+1.25+1.5と+1.0
+0.75+1と+0.5
+0.25+0.5と0
-0.250と-0.5
-0.75-0.5と-1.0
-1.25-1.0と-1.5
-1.75-1.5と-2.0

クォーターゴール方式を採用するかどうかはブックメーカーによって異なります。
どうしてもわかりづらい場合は2つのハンディキャップを表示するブックメーカーを利用するのも選択肢のひとつです。

アジアンハンディキャップの魅力

スポーツベッティングにおける勝敗とは「予想が当たるかどうか」であり、究極的には試合内容など必要ありません。
「Aが勝つ」「Bが勝つ」「引き分け」などの予想では、単にチームの強ささえ知っていれば十分です。
もちろん有力選手の健康状態やチーム全体の勢いなども加味して考えるべきですが、とはいえいかに勢いがあるとはいえFIFAランキング1位と最下位の試合で後者に賭ける人は少ないでしょう。
これはあらゆるギャンブルの本質であり、当たる可能性が低い選択肢をあえて選択する理由はあまりありません。

アジアンハンディキャップの魅力は、仮にFIFAランキング1位と最下位の試合であってもれっきとしたギャンブルになることです。
チームの強さやそれ以外の条件によってハンディキャップを設定し、適度なパワーバランスを擬似的に生み出すことでスポーツベッティングの面白さをより深く引き出すことができます。

アジアンハンディキャップでは試合結果の予想はもちろん、ライブベッティングを活用した「コーナーキックの成否」なども賭けの対象になるのがおもしろいところ。
より深く試合内容を分析したり予測したりする楽しみがあり、単なる応援ベットよりも格段に熱い時間を過ごせる可能性を秘めているのが大きな魅力です。